久我さんと話していると、素直に楽しいと思える

"  久我さんと話していると、素直に楽しいと思える。意外と共感出来る部分も、多くある。でも、実際に付き合ったらどうなるのだろう。お互いどこか遠慮しながら会話を進める今の関係の方が、心地よいと感じるのかもしれない。大人になると、素の自分を曝け出すことが怖くなる。何より相手の反応を気にしてしまうのだ。「私のイメージだと、久我さんは高層マンションに住んでいて、食避孕藥副作用 はシックなモノトーンで統一していて、オシャレな観葉植物とか置いてあるイメージです」「へぇ。じゃあ、今度確かめに来ますか?」「え?」「七瀬さんなら、いつでも大歓迎ですよ」こういうことをサラリと言えてしまうところが、本当に凄いと思う。「……い、行きません」「残念」久我さんは隣から私の顔を覗き込み、クスッと小さく微笑んだ。「次、何飲みますか?」「あ……じゃあ、また梅酒サワーで」

久我さんはグラスが空になる少し前に気付いてくれて、私の分のお酒も注文してくれた。本来なら、こういうことは女性の方が気付いて行動するべきなのだろう。細やかな気配りが出来ない自分を、心の中で責めた。""  それからだいぶ久我さんと話し込み、そろそろ帰らなきゃと店の壁に掛かっている時計に視線を送った。「あぁ、もうこんな時間ですか。じゃあ、次の一杯で最後にしましょう」「はい、そうですね」メニュー表を見ながら、最後の一杯は梅酒サワーではないものにしようと悩んでいたときだった。店の扉が開き、店員の「いらっしゃいませ」が明るく響いた。何気なく店の入口の方を振り向くと、そこには蘭が立っていた。「蘭!」「依織?どうしてここに……」そこで蘭は、私の隣に久我さんがいることに気が付いた。「なるほどね。ここでデートしてたってわけか。あ、生ビールちょうだい」

蘭は店員にビールを注文しながら、私の隣に立った。「久我さん、やっと依織が誘いに乗ってくれて良かったですね」「そうだね。まぁ、七瀬さんにとってはかなり強引だっただろうけど」「あんまりガツガツし過ぎると、嫌われますよ。依織、しつこい人嫌いだから」「さすが親友。君は七瀬さんのこと、何でも知ってるんだね」淡々と言葉を交わす二人に挟まれ、その会話を聞きながら感じていた。久我さんは、蘭に対して敬語を使わない。""  敬語を崩すのは、気を遣わずにいられる相手だから。久我さんは蘭と話すとき、私に見せる顔と違う顔をする。どちらかというと、蘭と話しているときの方が久我さんの素に近いのかもしれないと感じたのだ。「……何か、面倒くさくなってきた。私、帰るわ」「え、でも蘭、今来たばっかりなのに……」帰ろうとする蘭を言葉で制したのは、久我さんだった。「いや、僕たちが帰るよ。ちょうど七瀬さんも帰らなきゃいけない時間だし」久我さんは財布を取り出し、素早くお会計を済ませた後、私の手を取った。「じゃあ、お先に。行きましょう、七瀬さん」「あ……はい!じゃあ蘭、またね」店を出て少し歩いたところで、久我さんは繋いだ手を離してくれた。「あの、どうしたんですか?」「何がです?」「何か久我さんの様子が……」蘭が店に入ってきたときから、久我さんの様子が少し変わった気がした。何に違和感を感じたのかはわからないけれど、いつもの紳士的な久我さんの別の顔が一瞬見えた気がしてしまったのだ。「どうやら僕は、桜崎さんに嫌われているみたいなんですよね」「え?いや、そんなことは……」ないと思うと言おうとしたけれど、確かに蘭は久我さんのことをあまり良く思っていないような表現をすることがあるため、曖昧に言葉を濁した。"甲斐としばらく言葉を交わした後、ようやく彼女の視線が私に移された。「いきなり何だよ」